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合資会社 浦里酒造店とは

合資会社浦里酒造店(うらざとしゅぞうてん)は、茨城県つくば市の北西部・吉沼地区にある日本酒製造・販売を行う酒蔵です。

1877年(明治10年)、結城酒造(結城市)を経営する浦里家から分家して創業。

昭和に入ってから創業地に近いつくば市吉沼に移転し、現在もこの地で日本酒醸造を行っています。

現在、代表社員を務める浦里浩司さんで5代目になります。
(2022年より茨城県酒造組合の会長を務めていらっしゃいます。)

©︎Toshitaka Nakamura

代表銘柄は【霧筑波】(きりつくば / Kiritsukuba)。

©︎浦里酒造店

創業して140年余。

日本酒を愛する東京在住の元茨城県民に「茨城県のお酒はどの銘柄が一番美味しいと思う?」と聞くと、【霧筑波】と答える人が圧倒的多数。

それにも関わらず、都内で霧筑波に出会えることが稀なのは、霧筑波販売量の約95%が茨城県内、主に地元つくばで売り切れてしまうほどの銘酒であるため。

そんな幻のつくばの地酒【霧筑波】に迫るべく、浦里酒造店さんへ伺いました。

まずは蔵を構える場所のイメージを膨らませていただきたく、つくば市吉沼の地理について探ってみました。

 

つくば市街地から遠く離れた吉沼地区にある浦里酒造店

茨城県つくば市は、県の南西部に位置し、県庁所在地である水戸市から南西に約50km、首都東京から北東に約50km、成田国際空港(成田市)から北西に約40kmの距離に位置しています。面積は283.72km2で、茨城県内で4番目の広さになります。


©︎つくば市 位置と地勢より

浦里酒造店のあるつくば市吉沼は、つくば市の北西部に位置し、幾度の町村合併により現在に至ります。

1889年(明治22年)4月1日
茨城県筑波郡吉沼村(吉沼村、吉沼五人受、大砂村、西高野村、牛縊村が合併)

1956年(昭和31年)9月30日
茨城県筑波郡豊里町(吉沼村の一部)と大穂町(残部)

1987年(昭和62年)11月30日
つくば市吉沼(谷田部町・新治郡桜村と合併、つくば市へ)

2020年12月時点の、つくば市吉沼の人口は2,200名(うち外国人26名)**。
世帯数は823世帯。1世帯に対し約2.6名が住んでいます。
**つくば市 行政区分別人口統計表より

つくば市の総人口が241,068名(うち外国人9,449名)、106,891世帯ですので、吉沼に住う方は、つくば全体の1%弱。

浦里酒造店は、つくば市街地より遠く離れた場所にあることがなんとなく想像できますでしょうか。

そんなつくばの山奥で長年、酒を造り、販売し、今もなお地元に愛される浦里酒造店。

それは、つくばという街の特別な環境にありました。

 

時代は変遷しても変わらぬ味を造り続ける

「つくば市内で売れたので都内に出る必要なかった。」と語る社長の浦里さん。

現在、研究学園都市として発展したつくばの市街地は、学園都市ができる以前は赤松林だったそうです。

空港をつくるか研究学園都市かの選択肢の中、①東京から離れすぎていないこと②霞ヶ浦から十分な水が採取できること③地盤が安定した平坦地であったこと④鉄分の多い水質を理由に土地所有者が農地を手放すことに理解があり用地取得が容易であったこと等により、筑波研究学園都市として1961年(昭和36年)から具体的な検討が始まったといわれています。

その後、1973年に筑波大学が開学、1985年に国際科学技術博覧会(つくば万博)、同年西武百貨店筑波店、1999年につくば国際会議場、2003年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)、2005年につくばエクスプレスの開業など、新しい市場が塗り変わる街つくば。

国連に加盟している約8割の外国人が住んでいるという特異性を持つ街。

人が集中する街中から離れた場所で長年、つくばの地酒【霧筑波】を造り、地元の方々に愛されてきた浦里酒造店。

©︎浦里酒造店

他の地域よりも人の入れ替わりが激しく、時代とともに移り変わる街・つくばで、そこに住う人々の流行を機微に感じ取り、酒質を変えながら現在まで来られたのかと思っていた私の予想は大きく外れました。

「ずっと同じことをやっているだけで流行に迎合して造りを変えることはしてこなかった。」と浦里社長。

日本酒業界に足を踏み入れて約40年。

浦里社長が蔵に戻ってきた当時、一升瓶で10,000円ほどする有名な日本酒銘柄が、今や日本国内にあるアメリカ発祥の某ホールセールチェーンで当時の1/4以下の値段で買えてしまう時代となりました。

また現代の各種鑑評会では、フルーティーで香り高い日本酒がもてはやされる中、浦里酒造店では、茨城県発祥の小川酵母にこだわり、酸が少なく穏やかな果実味の綺麗な日本酒【霧筑波】を醸し続けてきました。

「香り高く、甘いお酒では、食事と合わせ続けられない。香りや味わいが食事の邪魔をしない酒が良いお酒。」というポリシーのもと醸された霧筑波は、お寿司屋さんの大将から絶大な人気を誇ります。

30年も経てば、飲む人も変われば価値観も変わり、流行にのっても永遠に売れ続けることはありません。

一時期スポットライトを浴びても、浴び続けることはできないのは芸能界に限らず日本酒業界も同じ。

それは日本人全体の “常に新しいものを追い求める” “過去のものとなれば振り向かない” 気質にあるのかもしれません。

時代の流れに沿って味わいを変えていくことは、日本酒に興味を持つ人への入り口としての役割を果たします。

しかし、地酒というものは、地域の人が地元を愛し応援してくれることで永く続けていくことができるもの。
つくばを離れても「また霧筑波を飲みたい」と思い出してもらい、それに応えるように当時の味わいを変わらず提供することで愛され続けてきた浦里酒造店。

時代に迎合せず「うちはうちの生き方で。つくばはそれができる街。」と話す浦里社長。

まっすぐに自分の造る酒【霧筑波】の味で勝負しているその背中は、とても勇しくかっこいいー!(ボスー!ついてゆきますー!)と、社長に惚れたとっておきの蔵見学の一日でした。

さて、次回のブログでは、浦里酒造店までのアクセス、霧筑波の美味しさに迫る蔵内見学、酒造りへのこだわりをご紹介したいと思います。(→【県南酒蔵見学】合資会社浦里酒造店へサケメグリにいってきました!

 

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合資会社 浦里酒造店
URAZATO Shuzōten Co., Ltd.
代表者:浦里 浩司(Kōji Urazato)
創業:1877年(明治10年)
住所:〒300-2617 茨城県つくば市吉沼982
TEL:029-865-0032
Web:https://www.kiritsukuba.co.jp
蔵見学:予約制(事前打ち合わせ要)
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