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吉久保酒造の蔵の中を見学しました!

社長室で一通り全体蔵が見えてきたところで、蔵の中を案内していただきました。

まずは精米エリア。

赤糠、中糠、白糠、上白糠の4種類。

移動して、階段を登った先に、

神棚と受賞した盾を中央に、左に麹室・検査室・酛部屋、右に浸漬タンク、蒸器が並びます。

約2,000石もの日本酒を醸造しているだけあって広い!

使用しているお米と精米歩合がわかりやすいように、マトリックスで展示されています。

Youtubeにも載せている吉久保酒造プロモーション映像を観て、

地下にある貯蔵タンクへ。

 

吉久保酒造の醸造の特徴は、麹の造り方にあり。

吉久保酒造と他蔵との違いで特徴的なものは、麹の造り方。

酵素の力価が突き抜けて高いところです。

「酵素の力価」とは、どれだけ糖化する力があるかという指標ですが、吉久保酒造はこの力価が非常に高いのです。

通常は、麹を素早く麹室の外に出して、若い麹でスッキリ綺麗なお酒を造ります。

吉久保酒造では、できるだけ長く、麹を麹室の中に滞在させます。

長く滞在させることで、発酵温度の上昇途中で温度が急激に落ちると予想していたお酒が造れなくなるため、通常は避ける方法。

発酵力が強いため、温度が上がりやすく、発酵が進みやすいですが、別の部屋に置いた大きな製氷機を使用し、また地下駐車場用の除湿機などを使い水分を抜くことで、温度を抑えます。

タンクには、タンク用のマットで外と中から冷やしながら温度をコントロールすることで、麹の活動を一旦、瑕疵状態にします。

この方法を選択することで、とても力の強い麹としてコントロールでき、旨味ががしっかりのった辛口の日本酒になるのだそう。

外気温の影響を受けづらくするため、蔵には大谷石が使われています。

「経験と感ほど危ないものはないと思っている。」
「とても細かく緻密に分析して酒造りをしている。」

と話す吉久保さん。

「オートメーションで分析しているわけではないけれど、酵母や麹菌はとても繊細な生き物のため、ほんの些細な条件変化でも影響を受け、うまくいかないことも…。

そのため、温度や時間等を事細かに記録し、データとして裏付け。

再現性もあるし、失敗を予め防ぐことができ、工程のどの過程を検討すべきか考えることができる。」と話し、

暴れん坊将軍の馬とポニーの違いを例えていました🐎(謎)←難しすぎて忘れましたw。

タンクから戻り、お待ちかねの試飲へっ♪

 

試飲・テイスティングは、親子3代飲み比べ

「雄町」の子供が「渡舟」、渡舟の子供が「山田錦」、山田錦の子供が「吟のさと」。

吉久保酒造では、酒米「吟のさと」を茨城の農家さんに造ってもらっており、親子4代のお酒が揃います。

テイスティングさせていただいたお酒は、

  • 『一品』純米吟醸 備前雄町 100%
  • 『一品』純米吟醸 短棹渡船 100%
  • 『一品』純米吟醸 山田錦 100%
  • 『一品』梅酒

短稈渡船(たんかんわたりぶね)は病気に弱く、栽培の難しさから昭和中期以降ほとんど育てられなくなり、現在では希少な品種。

短棹の「棹」は、”わら”という意味で、稲の稈が短く倒伏しにくい品種を表し、九州の福岡県産雄町が海を渡り、滋賀県で栽培されたことから、「渡舟」と名が付いたそうです。

短棹渡船の特徴として、

  • 華やかな香り
  • 米の持つ甘味
  • 柔らかい口当たり
  • が挙げられますが、

『一品』純米吟醸 短棹渡船 100%は、

  • やわらかで安らぎのある香り
  • 味わい深くふくよかな旨味
  • やや辛口

少し時間を置いてからまた口に含んでみると、短稈渡舟より雄町の方が香りが出てきている印象。

麹の造り方が強いため、温度が上がるとかなり味わいが変わってきて、短稈渡舟は、本来もう少し強く辛口感が出そうな気もしていましたが、極軟水で水が柔らかいため、舌が痺れるような辛さにはならないのかなと感じました。

冷えた状態で3種を飲み比べるとわからなかった違いが、温度により顕著に違いが出てきて面白いですね(´∀`)

また、バラエティに富んだ吉久保酒造の日本酒は、すべての日本酒に生酒があり、季節感と、歴史感を軸に魅せているところが特徴です。

生酒と火入れしたお酒の割合は、10:90。

吉久保酒造には、主要銘柄の『一品』のほかにも、

『爵梅(Shakubai / しゃくばい)』
『百歳(Hyakusai / ひゃくさい)』

という高級銘柄が並びます。

「爵梅」と「一品の斗瓶採り(Tobindori)」はどちらも、720ml で5,000円という高級酒ですが、滑らかな口当たりと低温発酵により醸し出されたフルーティーな香りが相まって、とても上品な味わいになっています。

海外用日本酒のひとつに、原酒をロックで飲むための商品も造っているそうで、これは国内でも応用できそうなので私が企画するペアリングイベントでの提案のひとつとしてとても参考になりました!

また、『一品』梅酒は、さわやかでほどよく甘くて美味しい梅酒。
日本酒『一品』の原酒と水戸偕楽園の梅をベースに、高級和菓子で使用される和三盆糖で造るこだわり。

そのため、甘だれせず、スッキリとした飲み口で、東南アジアなどの暖かい地域でも提供したらファンがつきそう♡

 

「茨城の食×吉久保酒造の日本酒」トーク

社長室へ戻り、

『吉久保酒造 × 茨城地酒全体 × 全国の日本酒』

をそれぞれ比較して、統計データを用いた分析資料から吉久保酒造の日本酒の味わいが、茨城県全体から見て、全国から見てどの位置にあるのかをお勉強。

吉久保酒造で醸造に使用される原料米は、
酒造好適米が山田錦、雄町、短稈渡舟、美山錦、茨城県産有機無農薬美山錦、ひたち錦、吟の里など。
一般米は、茨城県産日本晴などを使用しています。

今年の造りでは、水戸産の山田錦を使用し、来年の創業230周年へ向けて「水戸産山田錦+精米歩合46%」の純米大吟醸酒を醸造予定!

代々南部杜氏の流れがある蔵で、「地元の食×地元の米」で醸すべく茨城県産酒米の取扱を増産中です。

1年間で約2,000石造っており、特定名称酒が50%、普通酒が50%。

「”辛口”の定義が分かりにくいでしょうから。」

と、吉久保社長作成の極秘(?)な「清酒製造に関する主要製造歩合の表を見せていただきました*1。

この表には、①精米歩合②粕歩合③日本酒度が、
横軸に:各特定名称酒・普通酒・全体平均
縦軸に:吉久保酒造、茨城県、新潟県、4つの国税局、全国平均
のマトリックスに表示されていて、とても理解しやすい・・・!

(吉久保さんの許可をいただいたので書いちゃいますが、)

茨城県全体の平均精米歩合約58%。それと比較し、吉久保酒造の平均精米歩合は約63%。

普通酒の全国平均精米歩合が約73%に対して、新潟県は普通酒で約64%なので、普段使いの日本酒にも相当磨いているため新潟の日本酒が辛口の傾向があることがわかります。

一方、粕歩合ですが、各エリアの国税局平均が20〜28%程度であることと比較して、茨城県全体では26%、新潟県全体は32%、吉久保酒造は34%。

粕歩合が高ければ良いというものではなく、24%でも多いほうですが、より溶かすには、温度を上げたり、様々な酵素を使用し液体を抽出させます。

しかし清酒『一品』は、より良い品質を追求するため、米の旨味を残しながら粕歩合を高める手法をとっているそうです。

吉久保酒造の日本酒は、一言で言うと、

『旨味のある辛口』

水戸市民ひいては茨城県民は、お酒だけではなく旨味のある食べ物が好きな人が多いという特徴があります。

そのため、この『旨味のある辛口』が地域で親しまれてきたのではないかと推測できました。

ワインや日本酒を愛する外国人の方々でも興味深い『旨味(Umami)』。

「地域の食 × 地酒」

に思いを馳せると、茨城県民が日常に食する旨味とは、どこにあるのか?

たとえば赤身魚でいうとカツオ、白身魚ではあんこうをアンコウ鍋として、野菜では大豆から作られる納豆があげられます。

そこに共通しているのは、すべて醤油を添える文化。

日本各地のどの地域でも使われているものではありますが、ここに「茨城の食 × 茨城地酒」をディープに掘り起こすヒントが眠っている気がします。

 

吉久保社長が目指すものは、『それぞれの人の人生に楽しいを提供する』こと

海外留学経験とそれを通じて国内外の方々との広く交流があり、茨城県の県庁所在地のど真ん中で酒蔵を経営する吉久保社長。

とても活動的にされている中で、最終的に目指すところはどこなのか。

どういう思いで日本酒と向き合われているのか聞いてみました!

(原文のママ!)

—–
”みんながお酒を飲んで楽しんでもらえたら”

”難しい知識とかはあまり必要だとは思ってなくて、楽しく飲めるお酒があって、食べ物があって、人がいて、が大切”

”きっとどれかひとつが欠けると楽しく飲めない気がしている”

”人が生まれた時にお祝いするのもお酒で、亡くなるときもお酒で献杯、人生の節目節目に酒がある”

”そういうときに楽しめる酒を造っているのが自分が蔵元としての使命かな”

—–

精米歩合に関しても、削ったことはあまり重要ではなくて、削った後の味のほうが重要。
甘いとか辛い等の数値もそこまで重要ではない。
それよりも、酒って語るものがあるのではないか。

と、語っておられました。

「俺は酒蔵からしかスタートできないけど、Hirokoちゃんはもっと広い視点でPRできるからよろしくね(´・ω・`ゞ)」

っと背中を押され、蔵を後にしました. ε=(。ノ・ω・)ノ.

 

日本酒をPRする時に、日本酒そのものだけで提案するのは、なかなか難しいもの。

その日本酒が、なぜその味わいになったのか。

造られた背景を知り、造り手を知り、想いを知り、地域の酒の肴を知ることで、またひと味違った味わいになっていくのかなと思います。

酒蔵をめぐる旅「SAKE MEGURI (サケメグリ)」、ツアーを企画したいと動いている私自身がとても楽しい旅をしている日々です♪

 

<参考>

*1:関東信越国税局鑑定官室発行による『平成23年度酒造概況』の資料をもとに作成。

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吉久保酒造株式会社 / Yoshikubo Shuzo
代表取締役社長:吉久保 博之
創業:1790年(寛政2年)
住所:〒310-0815 茨城県水戸市本町3-9-5
TEL:029-224-4111
FAX:029-231-6005
Web:https://www.ippin.co.jp
E-mail:info@ippin.co.jp
蔵見学:可(要予約)
営業時間:8:30-17:30(土日定休、不定休あり)
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