吉久保社長の運転で、水戸駅→笠原水道→貯水するタンクがある場所をめぐった後は、吉久保酒造株式会社本社へ向かいました。
向かう途中で、吉久保酒造の日本酒を造っている方々について聞いてみました!
吉久保酒造で働く杜氏さんと蔵人さんはどんなチーム?
吉久保酒造株式会社で日本酒醸造に携わる方々の平均年齢は約31歳。
杜氏は44歳で、最年少は21歳!
通年勤務社員は、醸造部門で5名。
「おそらく日本で一番平均年齢低く、経験は一番あるメンバーじゃないかな。」と吉久保さん。
全員地元のスタッフで、18歳から酒造りしている人がほとんどだそう。
2014年秋から現在の醸造のすべてを統括する常陸杜氏の鈴木忠幸杜氏は、18歳から蔵入り。
名人と呼ばれた南部杜氏・佐々木勝雄氏を含め3代の杜氏から酒造りを学びました。
鈴木杜氏は、吉久保さんが社長になる前に雇われた方で、今年で26年目のベテラン。
(一瞬だけご挨拶しましたが、とてもほんわかお優しくてイケメンでした♡)
©️吉久保酒造FBページ
鈴木杜氏以外は、吉久保さんの母校からの入社が多く、吉久保さんが蔵に戻った時、教育実習で教えていた時の生徒が、いつのまにか蔵人として就職していたという珍エピソードも(°Д°)
(吉久保社長は、理科の先生の教職免許を持っています!)
麹屋さんは、バスケットボール部の後輩で、社長が地元へ帰ってきたときに酒造らせてください!と訪ねてきたり。
釜屋さんは、教育実習でお世話になった先生からのご推薦で入社することに。
これはたまたまではなく、30年ほど前から少しずつ地元の有志での酒造りを計画していたそうですが、今はそのフルメンバーが揃っての醸造チーム。
酒造りのときは、冬の寒い間、ごはんを作ったり、一緒に寝泊まりしたり生活を共にするため、
「酒造りにはチームワークが大事、むしろチームワークがすっごく大事!」
と話す吉久保社長は、
高校時代、運動部の団体競技を経験する中で、誰か困っている人がいたときに互いに助け合えるチームワークを大切にできる人を探してきました。
良いチームワークが続くようにと、吉久保酒造サッカー部があったり、お祝い事があるとステーキをみんなで焼いて食べたりするそうですよ^^
吉久保社長自身、キャンプなどのアウトドアが好きで、私を案内してくださったこの日も、決算期が無事終わったお祝いに夕方から蔵の外でBBQすると話していました🍖🌽
そんなこんな話をしながら、吉久保酒造の本社に到着する前に、『株式会社一品』の前を通り車内からご案内。
そうです・・・。吉久保社長は、お酒の卸売の免許も持っていらしたのです!
『株式会社一品』では、酒の卸売業をしており、アルコールは日本酒のほかビールや焼酎など幅広く取り扱っています。
茨城地酒の数も年々増えており、松盛、日乃出鶴、明利酒類、木内酒造など県内10数社取扱っており、主に水戸や、県南への出荷が多いとのこと。
もちろん、海外への出荷もするそうですよ!
私も営業キメテ(`・ω・´)きたら、お願いしようかな♪
本社営業の女性は、英語と中国語の唎酒師の資格を持っている方がおり、
社長の弟さんは、オーストラリアで営業されています。
San Francisco International Wine Competitionで W GOLD 受賞!
吉久保酒造へ到着すると、社長室へお招きいただきました!
こちら社長室!
粟野屋時代の陶器製の甕!
昔は「吉久保本家」という社名だったんですね…フムフムフム. ___φ(゚ー゚*)
そして社長室を物色(笑)していると・・・こんなメダルが!
実は、サンフランシスコのインターナショナルワインコンペティションで何年も受賞しているのです!
San Francisco International Wine Competition
https://www.sfwinecomp.com
“Best of Nation” といって、出品された日本のお酒の中でのNo.1の賞も受賞したそうです!
ゴールドメダルには、”DOUBLE GOLD” と書いてありますね!
「受賞した話をしたところでみんな知らないと思うので…」っとおっしゃっておりましたが、トランプ大統領が所有するワイナリーが受賞する年に、同じタイミングで賞を取っていたりするのに〜!
それを噯にも出さない吉久保社長。謙虚すぎます…(∩´﹏`∩)
アメリカを含めた欧米のソムリエに説明するときにはマーケティングツールとして少しだけお話しするそうです。
受賞した日本酒は、日本国内でも購入できるとのことで、飲んでみたい方は、このブログ最下にある吉久保酒造のHPからメールかお電話にて直接お問い合わせください♪
海外留学での経験が現在の海外展開への始まり
吉久保酒造の日本酒は、2004年から輸出を開始。
現在、海外13カ国に輸出され海外販売専用のお酒もあります。
海外用日本酒のひとつに、原酒をロックで飲むための商品も造っています。
「日本のマーケットと海外のマーケットは全然違いますよね。」等々と話が盛り上がっていたところ、この分厚い水色の本を見せていただきました。
「Sake: The History, Stories and Craft of Japan’s Artisanal Breweries」
シンガポールの出版社”GATEHOUSE PUBLISHING”が2015年9月15日に発刊した420ページにもおよぶハードカバーブック。
日本以外の海外の人々に向け発行されたSAKEに関する英文書。
北海道から沖縄まで60箇所の酒蔵、10箇所の焼酎醸造所、5箇所の泡盛醸造所の計75醸造所が選ばれ、その中で吉久保酒造も紹介されていました。
内容は主に、日本の醸造所の歴史や日本酒を醸造する情熱的な人々にフォーカスしたもの。
特に私が心に響いた部分は、普段、蔵見学では語られることのない蔵元の家族の歴史に深く切り込んでいた内容の部分。
- 吉久保社長は現在12代目ですが、10代目のお祖父様がご逝去された年に生まれて、11代目のお祖母様に厳しく育てられたこと。
- 1988年に火事に遭遇し、蔵を建て直したこと。
- タイのチェンマイへの留学は短期間だったけれどそれが人生のコンフォータブルゾーンに住んでいた自身の価値観を変えるきっかけになったこと。(本当は米国留学の予定が先生の手続きミスでタイになってしまったことは書いてなかったです!)
異文化体験により考え方が変わったことで、アジアを旅することに。
当時、タイにも日本酒はありましたが、温度管理がされてなくて老ねた状態の日本酒ばかり。
なぜなら、コンテナ輸送の際、日光に晒されたまま輸送されるため、コンテナ天井周辺は約90℃まで気温が上昇します。
そして商品として出荷される日本酒としてあってはならない温度上昇下降が繰り返されていました。
「温度管理がきちんとできれば日本酒はもっとたくさんの人に飲んでもらえる」と吉久保社長は確信。
タイで温度管理してくれる会社を探していたところ、JALの物流会社の「JALUX(ジャルックス)」に出会います。
ジャルックスが「一緒に組みましょうか」と話しを持ちかけてきてくださり、そこからタイで初めて温度管理をした日本酒の流通を始めることになりました。
次に、韓国の焼酎・眞露から輸出しないかと声がかかり、輸出2カ国目は韓国へ。
でも海外チャレンジするならアメリカと思い、アメリカの輸出会社を調べている中で、キッコーマン株式会社の海外関連会社である”JFC International Inc.”を見つけ、3カ国目はアメリカへ進出。
4カ国目はシンガポール。
展示会に参加した際、「赤道直下で暑く、日本酒の管理は保冷倉庫を所有している業者がベスト」と探していたところ、アイスキューブを製造するローカル会社を発見。
現地ローカル法人代表の年齢と近く、意気投合し、交流を深めていたところ華僑の大規模な資産家グループと親交が深まり。
そこから、”海外で日本酒がほしい”時には、吉久保社長へ声がかかるようになり、フィリピン、ミラノ、フランスと世界中に「IPPIN」のマーケットが拡散していきました。
2019年5月に、フランスで出版されたお寿司の本。
『L’ART DU SUSHI』
フランス人漫画家・Franckie Alarcon(フランキー アラルコン)さんの著書。
フランス人に向けて、お寿司にまつわる包丁の種類、しなり方、刺身の切り方、産地によって味わいが異なること、酢飯の作り方、下ごしらえの仕方など、かなりディープな内容となっており、日本人でも楽しめる内容となっています。
フランスでの初版は即売り切れ、重版が決定。
スペイン語、イタリア語での出版も確定したそうです。
著者は実際に、取材をするために水戸へ訪れ、水戸駅に降り立つところから吉久保社長が蔵案内している様子も漫画の中で紹介されています。
(吉久保社長、ご本人よりちょっとスマート(°Д°)!?)
日本酒醸造のプロセス、特定名称酒、お醤油をおみやげにあげたことなども紹介されています。
”お寿司といったらお酒だよね”という流れで酒蔵見学にいらしたそうですが、「それなら酒米生産者にも会って欲しい」と考えた吉久保社長。
紹介したのは、吉久保酒造で使用する酒米・美山錦を作っている農家さん。
茨城県で有機農法を営む「農業再生法人 有限会社アグリ山﨑(Agri Yamazaki)」をご紹介されるなど質の高い一冊となっています。
日本酒醸造だけではなく、コニャックも!
類稀な行動力により海外にご友人の輪を広げる吉久保社長。
吉久保社長のご友人であるハンガリー大使(旧)が、大使になる前に一緒に仕事をしたことがあったそうです。
それがご縁となり、ハンガリー大使館のイベントでハンガリーの紋章が入った枡を作り、一品を注ぐ、日本とハンガリーのコラボレーション。
こちらのコニャックも販売していたそうです。
世界で最も貴重なコニャックで、ヴィンテージがつけられるコニャックは世界に3つしかありませんが、その日本の代理店もしているのだそう。
(吉久保社長が何者なのか、もはや・・・わかりません(゚Д゚;≡;゚д゚) )
1858年、アメリカから輸入された接木用のブドウの木を介して、ヨーロッパにフィロキセラが蔓延し、ブドウが死滅した歴史が一大ワイン史にはあります。
その死滅する前のブドウで造ったコニャックが今もあり、このボトルの大きさかつ最も高価なものでお値段なんと1,800万円のコニャックがあるそうです!(´∀`)シイントカアリマセンヨネ?
日本酒の話題から脱線しましたが、とにかく多彩な吉久保社長。
次回は・・・
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吉久保酒造株式会社 / Yoshikubo Shuzo
代表取締役社長:吉久保 博之
創業:1790年(寛政2年)
住所:〒310-0815 茨城県水戸市本町3-9-5
TEL:029-224-4111
FAX:029-231-6005
Web:https://www.ippin.co.jp
E-mail:info@ippin.co.jp
蔵見学:可(要予約)
営業時間:8:30-17:30(土日定休、不定休あり)
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