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①【県北酒蔵見学】合資会社井坂酒造店をご紹介いたします!  からの続編です。

今回、2本目の記事では、井坂酒造店までの道のりと蔵見学の見どころ、杜氏の素顔について詳しく書いてみました!

 

コンテストに一切出品しない茨城県北地域の山奥にある酒蔵

合資会社井坂酒造店は、茨城県北部の中心に位置する常陸太田市の最北端に存在します。

茨城県内の酒蔵の中でも、蔵へのアクセスが決して良いとはいえない・・・そんな僻地とも言うべき山間に存在しています。

国内最大級の日本酒コンテストである全国新酒鑑評会や海外のIWC等の海外のコンペティションにも出品していない極めて稀な銘柄・清酒【日乃出鶴】(ひのでつる)

国内ではほぼ無名な銘柄にも関わらず、度々訪れる海外からのお客様からの評価が高い日乃出鶴の特徴は、「飲み飽きしないすっきりとしたキレ」を持つこと。

また、冷却装置付タンクを活用した高精白の酒が好まれる現代においてもなお、時代に迎合せず可能な限り古来からの道具による蔵造りをおこなっているところが特徴となっています。

また、蔵見学の見どころは、酒蔵兼ご自宅の玄関口となっている白壁と格式ある門構え。
大規模の蔵にはない風情がそこにはあります。

 

酒造時期と杜氏の素顔

冬の間、蔵元そして近所のおじいちゃんおばあちゃんの4名で酒造りをおこなっています。

寒期である毎年11月から3月下旬頃までの5ヶ月間、100石弱という極小単位の生産量を丹念に仕込みます。

私が最初に蔵見学に訪れたのは、2017年9月30日。
茨城県北地域の中で一番最初に訪れた酒蔵でした。

この日、旧式の酒造道具に触れたことで、蔵見学のワクワク感とアクセスの不便さから思いついた「SAKE TAXI」というアイディア。

4ヶ月後、そのアイディアで事業計画を作成し、茨城県主催の茨城県北ビジネスプランコンペティションでまさか最優秀賞を獲得するとはこのときは露知らず。(→茨城県北ビジネスプランコンペティション2017の記事

 

さて、その企画をつくるきっかけとなった方は、蔵の歴史や作業場などの案内をしてくださった、井坂家の12代目蔵元で専務の井坂 統幸(いさか むねゆき)さん。

井坂酒造店の蔵見学では、現在、杜氏を務める統幸専務が担当します。

学生時代は都内で暮らし、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいた統幸さん。

長男であること、里美が好きであることから、いずれ地元・里美に戻ることは自明の理。
しかし、20代の頃は酒造を生業とすることは考えていなかったそう。

30歳で帰郷。

一年で一度しか経験を積むことのできない酒造という畑違いの分野からのキャリア形成は、現在8年目になりました。

何度か蔵を訪れていますが、統幸専務は、お酒初心者にも非常に丁寧で理解しやすい説明をしてくださいますので、日本酒ビギナーにおすすめしたい酒蔵さんです。

↑ 計量器で遊ぶ見学者の皆様のはしゃぎっぷりったら♪( ´▽`)

 

井坂酒造店の蔵見学のみどころ

私イチオシの見どころは、上槽の「槽搾り」ですが、まずは蔵の入口から順番に。

1899年(明治32年)に建設された仕込み蔵は、土蔵(どぞう)造り。土と木と石で出来ており、熱を吸収しにくい特徴があります。

建設当時、冷蔵設備がなく木造造りの蔵が多い中で、夏涼しく・冬凍えるほどの冷気を避けつつ酒が保管できる土蔵造は貴重でした。

現在では、酒販のグローバル化が全国各地で進み、土蔵の姿は消え、残っていても仕込みまでしている酒蔵は稀であるなか、現在もその姿を保っています。

蒸しは和釜を利用した甑。重油バーナーで直火し、沸騰まで50分。その後40~45分間かけて酒米を蒸します。

朝7時に蔵元が点火作業を行い、蒸し上がる頃に社員が出社。

2階が麹の枯らし場となっており、一晩枯らした麹を、1階にあるタンクに投入。

麹室は、上記タンク部屋の先、一番奥の部屋にあります。

天幕式の自動製麹機を箱の代わりにして、ほぼ手作業で温度管理し、麹のお世話をしています。
また、樹脂製の箱を使用した製麴もおこなっています。

上槽は「槽搾り(ふなしぼり)」。

成人式の際に女性がお召し物として着用する「振袖」。
その振袖の袖の長さほどの白い袋(酒袋)にポンプを使用して醪(もろみ)を注入します。
7〜8割の醪を入れたら、酒袋を折り返して封をし、槽に重ねて置いていきます。

日常酒として親しまれる日本酒となる醪は、通常、アコーディオンのような“ヤブタ”と呼ばれる搾り機によって24時間以内の短期間で搾ります。

一方、井坂酒造店では、その全ては槽搾りによるもの。
丸2日かけてゆっくり搾られたお酒は、雑味が少ないのが特徴です。

槽搾りからなのか、井坂酒造店の酒粕は、甘酒にしていただくととても美味しい!です。
今年の分はすでにほぼ売り切れてしまったそうです!

槽で搾られてできたお酒の一部は、「無濾過生原酒」として販売されます。

その他は、火入のお酒として瓶詰めされた後、冷蔵庫に貯蔵されます。

一通りお話しを聞いたらあっという間に一時間半!
遠い道のりをかけて足を運ぶとついつい長居して質問してしまいます。

さて、知る人ぞ知る、そんな場所にある井坂酒造店までの道のりをご紹介しますね。

 

井坂酒造店へのアクセス

東京方面から井坂酒造店へ伺う場合、約2時間半〜3時間半となります。

井坂酒造店へは、飲酒しない方に運転していただき、自動車を利用しての訪問をおすすめします。

●電車とタクシーを利用して訪問する場合、

東京駅でJR常磐線「特急ひたち・ときわ号」いわき行/高萩行に乗車し、水戸駅で下車。
水戸駅からJR水郡線に乗り換え、常陸太田駅で下車します。
直通で常陸太田駅まで行く電車と、上菅谷駅で乗り換えが発生する電車があります。
常陸太田駅前からタクシーに乗車し、蔵まで35分弱です。

東京駅から片道、約3時間〜3時間半です。

●自動車を利用して訪問する場合、

東京駅周辺・宝町料金所(C1)から首都高6号線経由。

常磐自動車道・那珂ICで降りて、国道349号線をしばらく北方面へ。
国道461号線がぶつかる交差点(右手前にファミリーマート常陸太田里美店)が出てきたら残り5分ほど。
349号をそのまま直進し、右カーブになる「小中」交差点(「けいさつ」の看板あり)を左折して旧道に入ります。

左手に白壁の塀が蔵の玄関です。

東京駅からは総走行時間、約2時間半。

常磐自動車道・那珂ICから蔵までは、約45分です。

最近は、茨城県北ロングトレイルのコースエリアということもあり、蔵見学の需要も増加しましたが、目立たない里山にひっそり構え、鑑評会にも出品しない井坂酒造店は、とてもマニアックな酒蔵。

遠くまで来たからには、日帰りは辛いので、レンタカーで地域をめぐったりキャンプを楽しんだりの連泊がおすすめです。

蔵の近くには、全国でもトップレベルのアルカリ度を誇る温泉旅館があり、まったりする女子旅も増えていますので、日頃の疲れを癒す旅におすすめのエリアです。
横川温泉 中野屋旅館
元湯 山田屋旅館

現在、井坂酒造店の蔵見学は、事前予約制となっています。
蔵案内は専務のみご対応&冬見学は不可ですので、見学されたい方は早めのご予約をおすすめいたします。

次回、第3弾の記事では、井坂酒造店の銘柄のご紹介と、それぞれの味わいについて深く迫ってみたいと思います。

それでは!

♦︎関連記事♦︎
杜氏・統幸さんの中高の同級生が粕剥がしのお手伝いにきたときの記事はこちら↓
・粕剥がしのお手伝いにいってきました!@井坂酒造店

 

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合資会社 井坂酒造店
ごうしがいしゃ いさかしゅぞうてん
ISAKA Brewery / ISAKA Shuzōten
代表:井坂 勝安
創業:1818年(文政元年)
住所:〒311-0504 茨城県常陸太田市小中町187
TEL:0294-82-2006
FAX:0294-82-2006
Web:https://www.isakasyuzou.co.jp/
Online Shop:https://shop.isakasyuzou.co.jp
蔵見学:事前予約制
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