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合資会社井坂酒造店とは

江戸時代末期の1818年(文政元年)、井坂家の3代目「仁兵衛(にへい)」氏により創業された、合資会社 井坂酒造店(ごうしがいしゃ いさかしゅぞうてん)。

茨城県北地域の中央を走る常陸太田市の最北端「里美地区」に井坂酒造店の蔵があります。

酒造創業当時の里美地区(旧里美村)は、森林が多く存在する土地から、林業が主な産業でした。

社会の人口増加とともに、里美地区においても農林業を主とした働き手が増えましたが、仕事や生活を共にする人々の中でいざこざも増加。

それをみていた3代目・仁兵衛氏は、「何か、人間関係がうまくいくことはないか」と考えていたところ、1806年(文化3年)に「勝手造り令*」という酒造りの制度改革が起こります。
(*勝手造り令:米が豊作の年に、米の値下がりを防ぐために酒造りを奨励する国の法令)

もともとは武士の階級であった井坂家。

里美地区の豊富な水資源と良質な米など恵まれた里美の環境を誇りに思っていた仁兵衛氏は、

“飲んでうまい酒”をもって和やかな人間関係をつくりたい

と、酒造りを始めます。

 

日本酒・清酒の代表銘柄は、日乃出鶴(ひのでつる/HINODETSURU)】

 

焼酎の代表銘柄は、亀乃寿(かめのとし/KAMENOTOSHI)】

©︎井坂酒造店

初代・仁兵衛氏が、“日が昇る東の地で酒造りを覚えた”こと。

また古来より、“鶴は千年・亀は万年”と縁起の良い象徴として親しまれてきたことから、日本酒は「日乃出鶴」、焼酎は「亀乃寿」と名付けられました。

1899年(明治32年)一年を通して日本酒の貯蔵に適した低室温を保つことのできる土蔵を建設。

戦時中は酒造りを中止していましたが、戦後は芋が豊富にあったことから焼酎醸造から再開。

1955年(昭和30年)に新潟の越後杜氏を招いて日本酒造りを復活させ、“新潟造りらしい淡麗辛口の味”が蔵元の特徴になっていきました。

日本酒消費量全盛期である1965年〜1975年頃(昭和40~50年台)には焼酎醸造を一時廃止。

1996年(平成8年)からは自力醸造へ切り替え、現在社長を務める11代目・井坂勝安氏が代表社員兼杜氏のスタイルを確立。

日本酒消費量低迷を見計らって2006年(平成18年)に10代目・井坂紀一氏が焼酎醸造を再開を指示。

2018年(平成30年)に創業200年を迎えた合資会社井坂酒造店。

2020年(令和2年)より井坂家の12代目で専務の井坂統幸(むねゆき)氏が杜氏の役割を担い、地元の方々の力を借りて冬の間、酒造りに励んでいます。

 

標高の高く美しい山々に囲まれた蔵周辺の環境

茨城県の県北地域に位置し、茨城県でNo.1の面積を持つ常陸太田市。

里美地区、水府地区、金砂郷地区、常陸太田地区と大きく4つに行政区分がなされています。

その中で里美地区は最も面積が広い地区であるものの、1,120世帯(5.8%)、2,697人(5.6%)しかありません(2020/9/1現在;常陸太田市比率)。

里美村時代の村の木の象徴は「スギ」。

山々には杉の木が聳え立ち、山間を流れる清らかな里川に寄り添うように田畑が広がります。

そんな原風景の残る里美(SATOMI)は、どんな街かと聞かれとき、私が思い浮かぶフレーズは「満点の星空」「有機野菜」「豊富で美しい水」「酪農」「キャンプ」。

ここ里美では、この環境を氣に入り移住してきた方々が、有機野菜、ジェラート、平飼い卵、ナチュラルチーズ、木工作品などを生育・製造しています。

また常陸太田市の名産である常陸秋そばと醤油、味噌などの発酵食品を加えれば、豪華なお食事がワンプレートに収まってしまうくらい里美は食の宝庫なのです。

お米やお野菜がおいしく育つ食の宝庫ということは、水や土壌そのものが、人間の身体にとって栄養素が高く良い素材であるということ。

そんな里美地区で唯一の造り酒屋として存在し、里美の米と水、古来の設備を活かしながら酒を醸しているのが井坂酒造店なのです。

 

全国でも珍しい薄紅色の日本酒を醸す

“吟醸”酒といえば透き通った透明な色、“山廃”といえば少し黄色みがかった日本酒色を連想しますが、薄紅色の日本酒も中にはあります。

井坂酒造店では、この桃・ピンク・薄紫色を混ぜ合わせたような美しい薄紅色の日本酒を醸造しているめずらしい酒蔵。

2003年(平成15年)に古代米を作っていた取引先の社長から「古代米を使用した日本酒を造ってみませんか」と提案された勝安社長が醸造を開始したことがきっかけとなりました。

古代米『朝紫(あさむらさき)』を使用して完成した酒の銘柄は、
古代さけ 紫しきぶ(こだいさけ むらさきしきぶ)】

©︎井坂酒造店

薄紅色と古代米「朝紫」から連想される紫式部がモデルとなり、ラベルには十二単がデザインされています。

 

古代米「朝紫」は紫黒米の一種で、玄米の表面が黒〜濃い紫色をしています。

精米するともち米として食することのできる朝紫は、インドネシアのバリ島在来品種に日本の改良品種を3度掛け合わせ1996年に誕生した品種。

東南アジア周辺では、祭儀や薬膳料理に使われていました。

ポリフェノールをはじめ、ビタミンB1、B2、E、ナイアシン、鉄分やカルシウムなどのミネラル、そして食物繊維など栄養が豊富な朝紫は、もちろん美容にも最適♪

朝紫の酒粕を、甘酒としていただくのが私の美容対策のひとつ。

 

道の駅ひたちおおた、蔵直売のオンラインショップなどで購入できますので、古代さけ 紫しきぶとともに、甘酒も作って楽しんでみてくださいね。

古代さけ 紫しきぶのほか、井坂酒造店の日本酒の味わいの特徴については、次回か次々回で記事にします。

お楽しみに!

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合資会社 井坂酒造店
ごうしがいしゃ いさかしゅぞうてん
ISAKA Brewery / ISAKA Shuzōten
代表:井坂 勝安
創業:1818年(文政元年)
住所:〒311-0504 茨城県常陸太田市小中町187
TEL:0294-82-2006
FAX:0294-82-2006
Web:https://www.isakasyuzou.co.jp/
Online Shop:https://shop.isakasyuzou.co.jp
蔵見学:事前予約制
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