野村醸造の生い立ち、南部杜氏の梅澤努さんについて記した前回の記事「野村醸造株式会社をご紹介いたします!」からの続編です。
野村醸造へのアクセス
野村醸造は、茨城県常総市の北部にあり、北は下妻市、東はつくば市の市境までは近距離です。
しかし、蔵までの道のりは、最寄駅の石下駅より徒歩15分以上かかるため、自動車での訪問がオススメです。
蔵直営のレストランで日本酒を飲んで帰りたい場合には、飲酒されない方をドライバーにして訪問するか、石下駅からタクシーでの訪問をおすすめします。
東京方面からお越しの場合、
●電車
関東鉄道常総線 石下駅より 徒歩約15分。
東京駅→(JR山手線内回り/JR京浜東北・根岸線)→秋葉原駅→(TXつくばエクスプレス)→守谷駅→(関東鉄道常総線)→石下駅
乗換2回の場合、所要時間は約1時間15分、料金は片道約1,800円です。
石下駅西口から出て石下駅前の交差点を右に、北の方角に歩いていくと、野村醸造が出てきます。蔵の途中に差し掛かる交差点で左に折れていきますので、Googlemapなどで確認しながら歩いてみてください。
●自動車
常磐自動車道 谷和原ICより 車で約30分。
東京駅から約60km。混雑しなければ東京駅周辺からの所要時間は約1時間20分です。
カーナビで蔵の住所を設定すると、裏入口に到着してしまうこともあります。
その場合には、一本西の通りに出れば蔵の玄関がありますので、探してみてください。
●タクシー
関東鉄道常総線 石下駅よりタクシーで約4分。
「松並タクシー」電話番号:0297-42-2050
東京駅からの所要時間は、いづれも1時間半ほどみておけばよいと思います。
私は、同市内にある山中酒造店より徒歩で向かいました。
立派な蔵づくりのお家が何軒かあり、
石毛山 興正寺をすぎて「石下中央商店街」の看板をくぐり抜け、
昔ながらの文房具屋さんやレストランの看板。
石下の町をのんびりと探索しながら歩いていき約18分くらいで野村醸造に辿り着きました。
(しかし、蔵裏側を案内するGoogle mapよ…。しばらく道を彷徨う。笑)
野村醸造の醸造は、少数精鋭ならではの工夫された設備
蔵の門をくぐると休憩室があり、蔵のご案内いただく梅澤努杜氏とご挨拶。
(2021年現在、梅澤努杜氏は南部杜氏協会の会長を務めております。)
野村醸造の酒造りは、古風な道具を使用しつつも手間のかかる工程を機械化して少数精鋭で行っているところが特徴です。
前回の記事でもお伝えしましたが、野村醸造らしい個性のある酒を毎年醸し出せるよう、酒造りに関わる人をあえて少数で行い、機械に任せられる部分は積極的に頼る酒造りを行なっています。
そのひとつに、浸漬を終えた酒米を和釜まで運ぶ機械です。
UFOキャッチャーみたい(*≧∀≦*)っとテンション上がってしまいました!
機械を導入してから、だいぶ作業が楽になったそうです。
以前は、全国の蔵ではよく見かけた光景ですが、茨城県内の蔵見学では私は初見でした。
そしもう一つ、麹の自動温度管理機の製作があります。
蒸米に麹菌を振りかけて2日間ほどでできる麹は、その麹が完成する間、杜氏や蔵人が昼夜交代で温度管理を行い、麹の推移を見守らなければなりません。
酒造りを少数精鋭で行う野村醸造では、野村社長が専務であった時代に、茨城県の醸造試験場(現在の茨城県産業技術イノベーションセンター)でデータを収集・研究し、温度管理ソフトを開発。通常購入する金額の1/10のコストで完成させたといいます。
50kgの大床4台で行い、盛り後の温度管理をコンピューターでコントロール。温度が低いと自動で電気で保温が行われ、温度が高い時は冷却ファンが回る構造になっています。4台の床は各モニターで品温が麹室の外で確認できるようになっています。
酒造りは人造り。チームで造りあげることが大切で、どの部分でも手を抜かないことだと思う日々の連続です。杜氏や蔵人、蔵の後世のために、毎年データを細かく記録していると、長年酒造りしていても毎年新しい気づきがあります。毎日もろみの観察、管理をすることが楽しみです。
と、梅澤杜氏。
現在、南部杜氏協会の会長を務め、野村醸造歴27年の大ベテラン杜氏でも、謙虚に毎年の造りに真正面から立ち向かう姿を拝見していると、一年に一度しか経験を積むことができない酒造りというものの尊さを、改めて感慨深く感じた旅になりました。
そして、梅澤杜氏の岩手での生活であるりんご畑、ぶどう畑での手仕事と同様に、収穫まで手の掛かる仕事ですが、
良い品質を目指す点では、酒造りも果樹造りも同じ気持ちです!
と、体力の必要な大変なお仕事を年中されているにも関わらず、お話を伺う私たちもワクワクしてしまうほど梅澤杜氏ご自身がとても楽しまれている様子が伝わってきました。
野村醸造では床麹のほかに、大吟醸は箱麹を使用して製麴しています。
幾度もの災害を乗り越えて
大吟醸用の麹は手持ちで、それ以外はシューターでタンクへ運びます。
12月上旬にお伺いしたときには、最初の1本目の留仕込みがちょうど終わったところでした。
今季はコロナ禍で製造量が少ないですが、通常は11月上旬から翌年3月の間に酒造りを行います。
酒母室、製氷機、タメ桶など、昔ながらの味わいのある設備が並びます。
1枚約40kgの古風なヤブタに、制御板は比較的新しいタイプを使用しています。
古風な設備が並ぶ野村醸造ですが、2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川氾濫により、蔵のある常総市は6割が浸水。
野村醸造は、この周辺で最も被害が大きく、酒蔵と自宅が泥水に浸かりました。
高さ1.2m(胸のあたり)まで冠水し、操業を一時中断。
瓶詰め済の数万本におよぶ日本酒は濁流に流され、蔵の設備も含めた被害総額はなんと約7,000万円。県内の同業者から機械を譲ってもらったり、周辺地域の学生やボランティアの方々がお掃除にきてくださったり、新聞広告による義捐金を募ってくださる方も現れました。
「できるだけ早く復興に向けた酒を造りたい」という社長の念願が叶い、災害からわずか2ヶ月後には復旧。酒造りを再開することができました。
「2011年の東日本大震災、2015年の台風による関東・東北豪雨、2020年の新型コロナ禍とたった10年の間に3度も大きな被害を受けるなんて思いもしませんでした。」と蔵人の有泉さんのお言葉に、ハッとしました。
麹室の冠水は免れましたが、壁にはその爪痕が、災害を物語っておりました。
通常ならば、2度目の災害で事業継続を考えてしまいそうですが、野村社長は次の一手を考えます。
その一手とは、果たして…?
後ほどUPする次回のブログでは、その一手と【紬美人】の味わいについて記事にしたいと思います。ぜひご覧ください。
♦︎関連記事♦︎
・BRASSERIE JOZOへいってきました!
*アイキャッチ写真*
岩手の方言がとても素敵でほっこりする梅澤杜氏と、ユーモアセンス抜群の蔵人・有泉さん、素敵なお二人でした♪
(有泉さんの号令で、グーググーしてます👍)
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野村醸造 株式会社
のむらじょうぞう かぶしきがいしゃ
Nomura Brewery Co., Ltd.
代表取締役:野村 一夫
創業:1897年(明治30年)
設立:1954年(昭和29年)
住所:〒300-2707 茨城県常総市本石下2052
TEL:0297-42-2056
FAX:0297-42-8998
Web:http://www.tsumugibijin.co.jp
蔵見学:事前予約制
定休日:日曜日、祝祭日、正月、お盆
営業時間:8:00-17:00
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