地元杜氏の育成や茨城県産日本酒のブランド化の推進のため、茨城県酒造組合が茨城県産業技術イノベーションセンターの協力を受けて2019年に設立した認証制度の『常陸杜氏(ひたちとうじ / hitachi tōji)』。
前回のブログでは、“常陸杜氏とは” と題して、常陸杜氏の概要について記事にしましたが、今回はその続編。
常陸杜氏になるための認定基準、試験内容、試験スケジュールなどについてまとめてみました!
『常陸杜氏』認定試験の受験資格
常陸杜氏(ひたちとうじ)の認定試験は、茨城県酒造組合が関係機関の協力を仰ぎながら原則、年1回実施する試験です。
以下6条件、全てを満たす人に受験資格が与えられます。
1)茨城県酒造組合に所属する組合員の事業所において3年以上酒造製造責任者を務めたこと、製造責任者以外の者は7年以上製造現場における勤務経験があること。
2)前年度までに茨城県が開催する茨城県清酒カレッジ「杜氏コース」を受講済みであること。
3 )酒造技能士1級を既に保有する者、もしくは受験意志があり取得予定の者。
(『常陸杜氏』認定には酒造技能士1級の資格も必須)
4)茨城県酒造組合が管理する「蔵人経歴管理簿」上の経歴ポイントが40ポイント以上あること。
5)所属勤務先の代表者の推薦を得た者。(代表者は自薦可)
6)『常陸杜氏』認定後も自身の技術研鑚のみならず、積極的に講習会等の講師や後進の指導育成に協力し、茨城県清酒業界の醸造技術力の底上げや酒造組合の広報活動などにも協力する事を誓約できる者。
(受験申請時に誓約できること)
経歴ポイントとは
常陸杜氏認定試験の受験資格として40Pが必達要件となっている経歴ポイントについて解説します。
経歴ポイントは、大きく以下の4つに分類されます。
- 受賞歴ポイント
- 講習会参加ポイント
- 資格ポイント
- その他
このポイント合計が40P(40ポイント)満たす必要があります。
【受賞歴ポイント】
(製造責任者のみ該当させ、過去3年以内とする)
- 全国新酒鑑評会 金賞:3P× 回
- 全国新酒鑑評会 入賞:2P× 回
- 関信局清酒鑑評会 入賞:2P× 回(3部門とも対象)
- 茨城県清酒鑑評会 金賞:2P× 回(2部門とも対象)
【講習会参加ポイント】
(原則直近5年分を加算。配点は内容や年度によって今後変動の可能性あり。)
- 清酒カレッジ講習会(上級)参加:5P
- 清酒カレッジ講習会(中級)参加:1P× コマ数(試験醸造2P)
- 清酒カレッジ講習会(初級)参加:2P
- 酒造組合主催講習会・勉強会参加:1P× コマ数
- 杜氏組合主催講習会・勉強会参加:1P× コマ数
【資格ポイント】
- 酒造技能士1級:10P
- 酒造技能士2級:5P
- 日杜連加盟杜氏組合からの杜氏資格:10P(資格取得に要試験の杜氏資格のみ対象とする)
【その他】
- 講師実務ポイント:2P× コマ数
*経歴ポイントの配点等は鑑評会や講習会の内容変更に伴い、今後変更する可能性があります。
『常陸杜氏』認定試験の内容
試験は以下の①〜④で合格点をクリアすること
+
酒造技能士1級試験の合格
‖
常陸杜氏、となります。
①筆記試験
- 醸造技術に関すること
- 酒税法に関すること
- 帳簿作成に関すること
- 茨城県に関すること 等について出題
②小論文試験
「常陸杜氏」の意味を十分理解し毎年テーマを設定
- 記述式
- 1,200字以内程度
- 事前提出
③実技試験
- 市販酒の唎き酒能力
- マッチングテスト 等
④面接試験
- 「常陸杜氏認定委員会」による面接
- 小論文で記述した内容に関して質問される
なお、酒造技能士1級試験のみが不合格の場合には、翌年度以降の酒造技能士の合格をもって「常陸杜氏」の認定を受けることができます。
その場合、「常陸杜氏」認定試験の再受験は免除されます。
①〜④で一定以上の合格点+酒造技能士1級合格により『常陸杜氏』として認定されますが、茨城県酒造組合会長が最終的な合否の決定が行われます。
『常陸杜氏』の審査員
茨城県酒造組合会長が最終的な合否の決定を行いますが、審査を行うにあたり、「常陸杜氏認定委員会」の委員が、認定試験の採点等を行います。
2020年現在における、認定委員会の構成員は次の5名です。
<認定委員会構成員>
委員長 茨城県産業技術イノベーションセンター長
委 員 関東信越国税医局鑑定官室長
委 員 茨城県酒造組合会長
委 員 茨城県杜氏研究会会長
委 員 茨城県産業戦略部産業政策課長
面接試験審査、小論文の事前確認、採点等を委員が委嘱を受けて行います。
『常陸杜氏』認定までのスケジュール
『常陸杜氏』認定までの主なスケジュールは、以下の通りです。
4月上旬 「酒造技能士」受験応募開始*1
「常陸杜氏」受験応募開始*2
6月中旬 清酒カレッジ(杜氏コース<上級>)開始*3
7月中旬 「酒造技能士」試験 実技
7月下旬 「常陸杜氏」小論文試験 〆切
8月上旬 「常陸杜氏」小論文採点
8月下旬 「酒造技能士」試験 学科
9月中旬 「常陸杜氏」認定試験実施(学科、実技、面接)
10月上旬 「酒造技能士」合格発表(通常9月下旬〜10月上旬)
10月中旬 「常陸杜氏」合格発表
*1 各都道府県の職業能力開発協会
*2 茨城県酒造組合
*3 茨城県産業技術イノベーションセンター
厳しい試験を通過することによってのみ認証される資格の『常陸杜氏』認証制度。
取得ハードルが高いということは、茨城県由来の清酒を醸す醸造家としての高い技術・ 知識を持っていることの裏付けとなります。
私、Hirokoにとっては、茨城県の酒蔵さんへ転職するか、お嫁にいくかしないとご縁がなさそうですが、茨城の地酒が大好きで今後『常陸杜氏』に挑戦したい方は、まずはぜひ茨城県の酒蔵へ求職エントリーしてみてください_φ(・_・
誰もが持っている資格より、創設間もないハードル高めの資格は、これから世界へチャレンジする茨城地酒の職人資格として価値の高いものとなるはず♪( ´▽`)
*ここに掲載している内容は、2019年4月現在のものであり、今後変更する場合が可能性があります。