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日本地図の先駆者である「長久保 赤水(ながくぼ せきすい)」の関係資料693点が国の重要文化財に指定されたことを記念して現在、高萩市歴史民俗資料館にて特別展が開催されています。

本展では、赤水が遺した地図や書物等の貴重な資料を紹介し、郷土の先人の足跡を辿ることができます。

 

「長久保赤水 特別展」

長久保赤水(Sekisui NAGAKUBO)は、1717年(享保2年)に現在の茨城県高萩市赤浜の農家に生まれた江戸時代の儒学者で、日本で初めて全国地図を完成させた偉業を成した人です。

2020年の今年、赤水が遺した資料の693点が国の重要文化財に指定されたことを記念して、「長久保赤水顕彰会」協力のもと高萩市教育委員会が「長久保赤水 特別展」を開催。

開催場所となっている高萩市歴史民俗資料館には、赤水が遺した地図や書物等の貴重な資料が紹介され、郷土の先人の足跡を辿ることができます。

 

長久保赤水とは


©︎高萩市教育委員会

長久保赤水は、1779年(安永8年)、日本で初めて経緯線のある全国地図『改正日本輿地路程全図(かいせいにほんよちろていぜんず)』を完成させた人物です。

赤水はごく一般的な農家に生まれ、9歳で母を、11歳で父を亡くし、10歳から継母に育てられました。

赤水は23歳の時に従妹と結婚。継母を亡くした35歳の時、日本地図を描き始めます。

決して裕福な家庭に育ったわけではなく、苦労しながらも農業で生活を支えながら勉学に励んだ努力家。

赤水は、儒学者のほか、地理学者、農政学者の顔を持ち、地理学・天文学・農政学等多岐の分野にわたる研究成果を残しました。

その学才が認められて赤水が61歳の時、第6代目水戸藩主 徳川治保(とくがわ はるもり)の侍講(教師)となり、江戸 小石川の水戸藩邸の儒者長屋に生活拠点を置きます。

『改正日本輿地路程全図』の初版が完成したのは、赤水が63歳の時。

実測せず、縮尺を用いて、数々の情報に加筆修正しながら作成した日本地図は、主要道路に5,952もの地名等を刻み、彩色を施されたものでした。

水戸藩がサポートした幕府公認の『赤水図』は、1780年(安永9年春)に大坂で最初に発刊され、庶民に愛用され、幕末動乱期に無くてはならぬ指導者たちの必需品の一つにもなりました。

しかし・・・昭和、平成、令和と、私たちが学生の時に教科書で目にしたのは伊能忠敬(いのう ただたか)の日本地図ではありませんでしたでしょうか。

長久保赤水は、伊能忠敬よりも42年も早く、日本地図を世に示しましたが、江戸時代、伊能忠敬の日本地図は江戸幕府の秘図でした。

一方で、庶民は長久保赤水の地図を愛用していたそうです。

伊能忠敬図と長久保赤水図の違いは、伊能忠敬図は「測量図」であるのに対し、長久保赤水図は『編集図』であること。

赤水は主に、多くの資料を研究すると同時に、経緯度という天文学を学び、旅人や修行僧の話を参考にして地図を完成させたといいます。

そこには国境や名所旧跡だけでなく、港からの距離や主要街道・河川などの情報量が多く、物流や経済活動に使われていたことが推測できます。

『赤水図』は、明治維新で重要な人物となる伊藤博文、山形有朋、高杉晋作等の人材を私塾「松下村塾」で育成したといわれる長州藩士の思想家・教育家の吉田松蔭が愛用し、国内ベストセラーとなりました。

また、伊能忠敬図には、蝦夷地(現在の北海道)が描かれており、赤水図には描かれていないため、現代教育においては、伊能忠敬図のほうが主流になったと言われています。

赤水は81歳で赤浜へ戻り、85歳で生涯に幕を閉じました。

 

「長久保赤水 特別展」の見どころと楽しみ方

長久保赤水 特別展は、前期(8月11日〜9月22日)と後期(10月1日〜11月15日)に分かれており、私が訪れたのは前期でした。

後期が開催されている現在は、展示が大幅に変更されていると思いますが、なんといっても大日本地図を眺めながら自身が訪ねたことのある場所を探すこと。

そして大きな地図は、日本のみならず、王朝や民族が何度も交代している中国や韓国の地図もありました。

重要文化財ですので、詳細写真は省きますが、30分もあればじっくり見て回れると思います。

それぞれの展示物には、●重要文化財、○茨城県指定、□高萩市指定品、の表示しかありません。

会場に来るまでに予習されていない方は、会場入ってすぐに特別展のパンフレットがありますので、読みながら展示を周られることをオススメします。

会場となっている高萩市歴史民俗資料館の2階には、その昔、高萩市の民家で使用されていた吊りランプ、高機、足踏式脱穀機(ガラコン)などが展示されており、じっくり見入ってしまいました。

吊りランプ:ランプのほや(火屋;火をおおうガラス製の筒)が壊れないように改良されたタイプ。

卓上型蓄音器:レコードから針に伝わる振動を”振動板”に与えて音に変換し、ホーンを通して再生する機械。ターンテーブルの動力はゼンマイです、箱脇のハンドルを回すことにより1分間に約78回転させることができます。

高機(たかばた):手織り機のひとつ

足踏式脱穀機(ガラコン):足踏式で稲藁から籾を取る道具

唐箕(とうみ):脱穀した米と雑物を分ける道具

「静かにゆっくり回してね」とパネルがありましたが、こういうとき壊すのが私なので遠慮しましたm(_ _)m

 

万石どおし(まんごくどおし):搗き米(すきごめ)を流下させて糠などを篩い(ふるい)落とす道具

柄枡(えます):お酒などの液体の計量枡

アイロン、電話、ゆたんぽなどなど。

また、1階会場の入口には、「高萩歴代領主」の本や絵葉書が販売されておりますので、ご興味持たれた方は事務局の方に声をかけてご購入ください。

私は一番右の表紙がオレンジ色の本を購入しましたが、左側見開きは通常の小冊子スタイル、右側見開きは漫画スタイルになっておりますので、小さなお子様のお勉強にもオススメの一冊となっています。

そのほか、茨城県市町村歴史民俗資料館連絡協議会発行の「資料館で茨城を知ろう」スタンプラリーの台紙がありますので、この機会にほかのスタンプも集める旅に出かけても良いかもしれませんね♪

 

「長久保赤水 特別展」開催概要

▶︎開催期日
2020年8月11日(火)〜11月15日(日)

▶︎開館時間
9:30~17:50(11月1日からは17:00閉館)【平日】
9:30~17:00【土日祝日】

▶︎休館日
月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日)
9月23日(水)〜9月30日(水):特別展準備・展示替えのため

▶︎場所
高萩市歴史民俗資料館(茨城県高萩市高萩8-1)

▶︎入場料
無料

▶︎新型コロナウイルス感染症予防対策について
マスク着用(発熱・咳・くしゃみ等の症状がみられる場合は入館をお断りする場合があり。)
入館時、氏名等のご記入と検温(サーマルカメラを設置。)

 

伊能忠敬と酒蔵の関係

さて、今回のブログは、長久保赤水紹介記事ではありますが、伊能忠敬について調べていたら、「茨城」と「酒蔵」とのご縁がありましたのでご紹介します。

伊能忠敬は、生まれたときの姓は「小関家」(現・千葉県山武郡九十九里町小関)。
入婿した父の旧姓は「神保家」(現・千葉県山武郡横芝光町)。

伊能忠敬の父親の実家・神保家、忠敬自身が入婿した伊能家(現・千葉県香取市佐原)はどちらも酒蔵を営んでいたそうです。

伊能家の酒造業は、1825年(文政8年)に佐原の「東薫酒造株式会社(とうくんしゅぞう)」へ事業譲渡され、現在も佐原にある酒蔵2件のうちの1件として受け継がれています。

©︎東薫酒造HP

私が調べるところには何かと酒蔵が関係してくる不思議なご縁。

この世界に導かれているのかも・・・。

 

 

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長久保赤水顕彰会
NAGAKUBO SEKISUI KENSHŌKAI
The memorial society of Nagakubo Sekisui
http://nagakubosekisui.org
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