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岡倉天心「茶の本」fusion DINNER in 茨城県天心記念五浦美術館とは

明治時代以降から現代まで、日本美術史を語る上で避けては通ることができない最重要人物である『岡倉 天心(おかくら てんしん / Tenshin OKAKURA)』。

その岡倉天心が、壮年後期から晩年を過ごした茨城県北茨城市の五浦(いづら)で、何を想い、ここで過ごしたのか。

1906年5月に出版した岡倉天心のベストセラー『茶の本』(ちゃのほん / The Book of Tea)の世界を、茨城県北(いばらきけんぽく / Northern IBARAKI)の料理人5名によるフュージョンで天心の世界観を表現。

五感でいただくディナーへと誘います。

その旅のはじめは、天心の世界観を知るため、五浦六角堂を巡りました。

2020年11月6日(金)、JR常磐線 磯原駅から旅はスタートしますが、今回のブログではまず前編をお送りします。

 

————ブログ前編・旅スケジュール————

14:15~  JR常磐線磯原駅改札前集合
14:20~  ツアーバスにて岡倉天心ゆかりの地、五浦六角堂へ。
16:00~  五浦六角堂からバスで五浦美術館へ。

————ブログ後編・旅スケジュール————

16:30~  ウエルカムドリンク
17:00~  ディナースタート
19:30~  ディナー終了(予定)、バスで五浦出発
20:00頃  JR常磐線磯原駅着、解散

 

@JR常磐線 磯原駅

 

岡倉天心とは


©︎FUKUI MUSEUMS

1863年(文久2年)から1913年(大正2年)まで50年という短い生涯の中で、近代日本美術で功績を残した思想家・岡倉天心。

明治維新の少し前、幕末の動乱の時に横浜で生まれました。

福井藩の下級藩士であった天心の父は、商売の才能に優れていたことで貿易商として横浜行きを命じられます。

福井藩が横浜に開いた商館「石川屋」の商店の角倉で生まれたことから「角蔵→覚三」と名付けられ、その後生涯を通して、天心は国内外で本名の「岡倉覚三(Kakuzo OKAKURA)」として活躍しました。

父の仕事の影響から、英語が堪能で国際的な眼を持つことができた天心。

入学した東京開成学校(現:東京大学)文学部在学中、英語が堪能であったため、英語講師のアーネスト・フェロノサの美術品収集を助手として手伝うことになり日本美術を調査し始め、本格的に美術の世界へ。

 

岡倉天心が残した功績と「茶の本」

岡倉天心が残した功績は、以下の4つ。

1)東京美術学校(現・東京藝術大学)を創設

江戸時代から明治初期、日本には美術系の大学がありませんでした。
美術大学のない時代に、現在の東京藝術大学を創設し、1887年(明治20年)初代校長となった天心。
江戸時代までは「日本画」という概念が国の中で確立されておらず、各地域に様々なスタイルの画がありました。
海外へ「日本画」を発信していくためには、“日本画とは何か?” という概念を作る必要がありました。
日本画・日本美術のテンプレート・最初の模範的なイメージをつくったのが岡倉天心でした。

2)文化財保護法を制定

文化財の保存・活用と、国民の文化的向上を目的とした法律である文化財保護法。
国が大切だと思うものには予算を取り、後世まで語り継がれるように国は保護すべき、と法整備に向けて立ち上がった天心。
明治初期の頃、“重要文化財” や“国宝”という概念はまだなく、国は文化財を把握していませんでした。
知らぬ間に日本の文化財が海外に売却・荒廃していることを知った天心は、たくさんの文化財が眠っているであろう全国の神社仏閣に聞き込み調査をしました。
そこで様々な財をチェックしながらリスト化し、国に提出。文化財保護法が制定されました。
4年前(2016年)の4月・5月に東京都美術館にて開催された、伊藤若冲の生誕300年記念「若冲展」。私も拝観しましたが、若冲ブームは記憶に新しいですよね。
若冲の展覧会が開催できることになったのも、なんと岡倉天心のおかげなのです。

3)日本美術院の創設

美術の2大展覧会というと「日展」と「院展」。
「日展」は、国が主催の展覧会。一方、「院展」は日本美術院が主催の展覧会。
日本美術の2大展覧会の一つである「院展」を主催する日本美術院を創設したのが岡倉天心なのです。
生活に必要不可欠なものではなく教養・娯楽の一部ともいえる美術や芸術系イベントを100年続けてきたということは並大抵ではないこと。
途中、戦争もあった時代を経て、天心が亡くなった後は通常はトーンダウンしていくものがイベントですが、いまもなお続き、春と秋に開催されています。

4)絵を描かない世界で初めて認められた東洋の美術思想家

明治初期に西洋の文化が入ってきて、美術学校だけではなく博物館も作ろうと決心した天心。
廃仏毀釈で安くなった文化財を、ボストン美術館が購入して山積みになっていた1900年代前半、天心はNYのボストン美術館の中国・日本美術部長として招かれました。
およそ15,000点にも及ぶ美術品の整理を依頼されたものの、誰が書いたものか不明なものが多数。
さらなる調査と美術品収集のため、ボストンと茨城県北茨城市の五浦を往復する日々を過ごすことになり、1906年(明治39年)に美術院の拠点を五浦に移しました。
天心が五浦に美術院の拠点を移した1906年、日本の茶道を欧米に紹介する目的で、ニューヨークの出版社から刊行したのが、今回のイベントのテーマ『茶の本』。
茶道という日本の文化を、仏教(禅)、道教、華道との関わりから広くとらえ、日本人の美意識や文化を解説しており、第1章〜第7章構成となっています。
天心はアメリカの大統領に日本美術についてレクチャーするなど、当時アメリカの世論にまで影響を与えたそうです。岡倉天心は、自らは絵筆を持たない人、つまり絵描きではない単なる思想家。

近代日本美術に多大なる影響を与えた偉人であるのに、なぜ天心はそれほど知られていないのでしょう?
それは、天心が起こした “スキャンダル” が関係しています。(天心の名誉のため、ここでは割愛しますm(_ _)m)

 

六角堂のある「天心遺跡」めぐり

前半で、岡倉天心についてだいぶ熱く語ってしまったので、ここからは、写真をメインにお送りします!

今回の旅で最初に立ち寄ったのは、茨城大学五浦美術文化研究所が管理する「天心遺跡(Tenshin Remains)」。

天心が波の音を聞き、太平洋を眺めるなど思索の場所として自ら設計した六角堂(ろっかくどう / Rokkakudō)。別名・観瀾亭(かんらんてい / Kanrantei)が天心遺跡の見どころですが、天心遺跡のエリアの中には、

  • 「亜細亜ハ一なり 石碑(“Asia is one” Stone Monument)」
  • 「土蔵跡(The Remains of the Store house)」
  • 「ウォーナー像(Statue of L.Warner)」
  • 「天心記念館(Tenshin Memorial Hall)」

そして天心が生きていた時代ほぼそのままの

  • 「長屋門(Nagayamon Gate)」
  • 「天心邸(Tenshin’s Residence)」

があります。

案内してくださったのは、茨城大学の人文社会科学部教授で五浦美術文化研究所の藤原貞朗所長。

藤原所長のユーモアのある逸話に魅了されながら、通常は立入禁止の天心邸(てんしんてい)へも特別にご案内いただきました。

今回は、芸術家 片口直樹 × 横田将士 さんの「観月会2020 時の回廊展」が同時開催されて、天心邸や天心記念館の通常の装いに華を添えられておりました。

 

六角堂は2011年の東日本大震災の際に、土台を残して津波に呑まれてしまいましたが、2012年に再建されました。

六角堂の窓ガラスは、少し波を打ったようなガラスが特徴です。
2012年の再建の際、日本国内にはこのガラスを作ることのできる職人はおらず、イギリスから輸入しました。コンクリートの土台を覆う御影石は、隣町の茨城県久慈郡大子町から。瓦は愛知県のものだそうです。

六角堂のすぐ下の海を見下ろすと、とても透き通った海水が一面に広がります。

天心は、六角堂から米国の方角を眺め、何を思っていたのか。

天心への思いを馳せながら続きは、ぜひこの天心遺跡へ訪れてみてください♪

長屋門を出て五浦観光ホテル別館 大観荘のほうに15秒ほど歩いていくと、岡倉天心の分骨されたお墓もあります。
このおまんじゅう型のお墓は、韓国スタイルのようでして、日本国内でも珍しい形のお墓なのだそう。

こちらもぜひ訪れてみてくださいね。

後編では、旅のメインとなる、“岡倉天心「茶の本」fusion DINNER” の会場となる 茨城県天心記念五浦美術館 で茨城県北5名のシェフによるフュージョンディナーとドリンクのペアリングについてご紹介します♪

→後編ブログ

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茨城大学五浦美術文化研究所
Ibaraki University Izura Institute of Art and Culture
住所:〒319-1703 茨城県北茨城市大津町五浦727-2
電話:0293-46-0766
URL:http://rokkakudo.izura.ibaraki.ac.jp
入場料:有料
休館日:月曜日(月曜祝日の場合はその翌日)、12月29日〜1月3日
開館時間:入館は閉館30分前まで、天候により変更あり
[4月〜9月]8:30〜17:30
[10月、2月、3月]8:30〜17:00
[11月〜1月]8:30〜16:30
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